第33話「異音」  百物語2012本編

語り:合いの手
108 :代理投稿 ◆ztxSLaq9Ok :2012/08/18(土) 23:06:39.45 ID:YriqamUu0
合いの手  『異音』

(1/2)

ネット上で知り合い、共に創作活動をしていた友人がある日亡くなった。
同級生でも家族と親交があったわけでもない俺が知ったのは亡くなってからひと月もたってから。
友人の母が遺品を整理しているときに、友人の普段使いのPCをみつけたのがきっかけだった。
起動してみたところ、デスクトップに もしもの時に.txt というデータが残されていたらしい。
データの中身はたった一言。
【もし自分に何かあったときは、同じ趣味で知り合った○○(=俺)にPCを譲渡してくれ】
というものだった。
○○(=俺)が誰かわからなかった友人の母は、メールの履歴をたどり俺に連絡を取ってくれたらしかった。
友人は男で、オタクであったし、家族に見られたくないものもあるだろうと
友人の母は快くそのPCを俺に渡してくれた。
テキストデータを残すなんて物書きをしていた友人らしいと思いつつ、
友人の遺志を継ぐ形ではないが、俺はそのPCを普段使いのPCの一つにすることにした。


109 :代理投稿 ◆ztxSLaq9Ok :2012/08/18(土) 23:07:26.92 ID:YriqamUu0
(2/2)

友人のPCを受け取り、数か月たったある日の深夜、突然部屋の中から鈴の音が聞こえてきた。
 チリリリリリン
驚いてあたりをみわたしてみてもいつもの部屋で何も変わったところはみえない。
外から聞こえたにしては鮮明な鈴の音だった。
気のせいか、とネットサーフィンを再開するとまた
 チリリリリリン
と鈴の音が聞こえてきた。
静かな部屋に鳴り響いた鈴の音、今度はどこから聞こえてきたのかはっきりとわかった。
目の前の、あの亡くなった友人から受け継いだノートパソコンからだった。
 チリリリリリン
じっとノートパソコンを見ていると三回目の音がなった。
なんだ?どういうことだ?
甲高い鈴の音がなる原因はわからない。
 リリリン…
先ほどより小さく音がなると、ふっ、とノートパソコンの画面が暗くなった。
電源ボタンを押してもうんともすんともいわなくなった友人のノートパソコン。
普段使いの別のPCを起動し、症状を検索してみるとすぐに原因がわかった。
なんのことはない、そのノートパソコンのHDDに寿命がきて、おしゃかになったのだ。
そうか、ついに壊れてしまったのか…と寂しい気持ちになったとき
もしかしたら友人が最後に別れを告げに来てくれたのでないか、俺はそんなことを考えた。

終わり