第42話「夏の病」  百物語2012本編

語り:憂莉 ◆BPe4rMCg8k
145 :代理投稿 ◆ztxSLaq9Ok :2012/08/19(日) 00:25:01.55 ID:wlTC3hbH0
憂莉 ◆BPe4rMCg8k 『夏の病』

夏というのは不思議なもので、毎年怪談が流行る。
少しでも涼しい気分になりたいものなのかと考えるが、よくよく思えばゾッとした時というのは涼しいというより生ぬるく気持ちのいいものでは無いと思う。
それでも暑いよりはましなのか、やはり今年も怪談は流行る。
霊にとっても夏というのは自分達の季節と考えているのか、不思議と活発になるような気がする。
思い返せば俺の霊体験も夏に集中している気がする。
今回は俺が毎年夏になると思い出す、そんな話をさせていただきたいと思う。
小学生の頃の話だ。
まだ七月くらいだったと思う。
梅雨が明けたか明けてないか、気温の変化の激しい時期に俺は高熱で倒れた。
俺の平熱は35度代、熱を測ってみたら39度はあったと思う。
そこまでの熱はでたことが無く、親の車で病院へ連れていかれた。
病院に着くと採血をされ点滴をしてもらい、今日のところは入院という形になった。
親は明日また来る、とだけ言い残し帰宅。
一人病室に残された俺は孤独感を味わいながらも、薬が効いてきたのか、単に安心したからなのか。
ともかく少し眠気に襲われていた、普段は電気を完全に消さないと眠れないのだが電気がまだ消えていない、明るい病室の中で今にも寝そうになっていた。
ふと気付くと、目の前に知らないおばあさんがいた。
病室の中は俺一人しかいない。
だからあるとするなら俺の客なのだろうが、見たことの無いおばあさんだ。
おばあさんはニコニコとこちらを見ていたので、頭を下げて「こんばんは」と言って頭を上げたらおばあさんは消えていた。
そのときは眠気と熱で頭がボケーッとしていたので、何だったんだろう?程度しか考えずそのまま寝た。
それから毎年、夏に体調を崩すとそのおばあさんを見る。
何か縁ある人の霊なのかと考えたが、心当たりはまったくない。
不思議だが何をされるというわけでも無いし、ニコニコとしているおばあさんを見ると体調を崩して弱っている心も安らぐのでありがたく思っている。
終わり。