第12話「扉」  百物語2012本編

語り:何でも ◆3/OAb1.6.2
42 :何でも ◆3/OAb1.6.2 :2012/08/18(土) 22:02:58.05 ID:8mktT7860
扉 1/2 
聞いた話ですが扉というものは結界のような効果も持っているそうで、
悪い霊は自分の手では開けることができないそうです。
だから色々な手を使い中にいる私たちに開けさせようとするらしいです。


私はアパートに住んでいるのですが、毎朝4時頃になると3階のほうから
ドンドン、チャ、ドンドン、チャ
とリズムにのせたような音が聞こえてきます。
恐らく玄関のドアを叩いてノブを回している音のようでした。
鍵がかかっているのか開けてもらえないようでそれはいつも10分ほど続きます。
そしてどうやら自分の家族、他の住民はおろかそのの部屋の住民すら気づいていないようでした。
まあ、夜も遅いのでみんな寝ていて聞こえないのだろうと思っていました。

43 :何でも ◆3/OAb1.6.2 :2012/08/18(土) 22:04:04.78 ID:8mktT7860
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そんなある日またいつものように音が聞こえてきました。
しかし、その日は4時を10分ほど過ぎていました。
今日は正確じゃなかったな など思いつつ特に気にせずまた私はまた眠りにつきました。
その日を境にその音は少しずつずれていきました。
そしてとうとう6時、7時という時間になり周囲も気づき始めたある朝、
ドンドン、チャ、ドンドン…カチャリ
鍵を開ける音がしました、その次の瞬間。
タンタンタンタンタンタン
黒い影のようなものが物凄いスピードで足音を立てながら階段を下りていきました。

次の日その部屋は空家になっていました。

あの影が何だったのか、なぜ扉を叩いていたのか、その住人がどこに行ったのか、私は分かりません。
しかしあの時はっきりと見ましたあの部屋の住人が抱えられていたのを…

【完】