第13話「一生の宝物」  百物語2012本編

語り:三年目の朝顔 ◆6.QkgMwzsU
45 :三年目の朝顔 ◆6.QkgMwzsU :2012/08/18(土) 22:04:56.85 ID:Pz8hVc6P0
「一生の宝物」1/2

ある日、朝起きたら首の後ろから肩甲骨にかけて、ものすごい痛みがはしった。
前日、激しい運動をしたわけでも無いし、背中を強打したわけでも無い。
私は何だろう…と思いながらもPCのやりすぎか、肩こりがひどくなったのだろ
うと思い、湿布を貼ったり、お風呂の中で揉んだりしていた。
しかし、その痛みは一向に治らないばかりか、ますますひどくなり、枕のせい
かと思い外しても、うつ伏せになっても痛い。どういう格好で寝ても痛むので、
寝るのさえ一苦労だった。

よく、霊障がある場合の除霊に、背中を叩いたりするけれど、まさにそのあたり
に、鉄の重い板が貼りついていて、身動きが取れない様な感じで、さらに歩く
だけで振動が首に響いて激痛を感じるので、これは何かあるんじゃないかと
思いつつ、5日も痛みに耐えていた。

そして「明日こそ医者に行こう」と思ったその日、様子を伺いながら起きると、
不思議な事に昨日までの激痛が嘘の様にケロリと治っていた。
私は「え?…何で?」と驚きながら伸びをしたり、腕を回したり、首を回したり
して、本当に痛みが取れたのかを確認した。

結果、どこも全く痛くないので、あれはいったい何だったんだろう…と不思議に
思っていると、友人から恩師が亡くなったとの知らせがあった………。

46 :三年目の朝顔 ◆6.QkgMwzsU :2012/08/18(土) 22:05:53.56 ID:Pz8hVc6P0
2/2

私は、今までの原因不明の痛みの理由がわかった気がした。

恩師は半年前に急に倒れて、以降入退院を繰り返していた。
私は忙しさにかまけて、とうとうお見舞いに行く事も出来ず、それはとても
後悔したけど、恩師の痛みや苦しみを少しでも背負えたのならそれで良いと
思った。そして何よりも私に別れを告げに来てくれた恩師に感謝の気持ちで
一杯になった。

恩師の豪快さ、快活な笑顔、大きな手のひら…それらはいつまでも私の中に
生きていて、一生無くならない大切な宝物です。

~ 完 ~