第46話「気配」  百物語2012本編

語り:憂莉 ◆BPe4rMCg8k
159 :代理投稿 ◆nqnJikEPbM.8 :2012/08/19(日) 00:56:45.77 ID:jvZ3IDbu0

憂莉 ◆BPe4rMCg8k  『気配』

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俺には霊感があった。
あった、というのは今はほとんど無いからだ。
小学生くらいのころはたまに霊を見たりしたのだが、大人になるにつれて霊感が無くなるというのは本当なのか、中学生になったころからまったく見なくなってしまった。
しかし今でもその霊感があった頃の名残か、たまに気配を感じることがある。
明らかに何者かの気配を感じるのだが、そこには誰もいないし何も見えない聞こえない、そういうことがたまにある。
数年前の話になる。
フリーターの俺は毎日のようにバイトに明け暮れていた。
ほとんど遊ぶ暇も無かったのだが、その年はバイトの中で数名特別親しくなり、よくバイト終わりで飲みに行ったり、家に泊まったりとなかなか充実した毎日を送っていた。
その日はバイトが休みだったと思う、昼頃から友人宅に集まり桃鉄を楽しんでいた。
桃鉄をしながら話も盛り上がり、そういえば後ろのやつ喋ってないなと思いふと後ろを振り返る。
……誰もいない、当たり前だ。
俺はテレビから一番離れた場所で座っていたのだから。
しかしなぜだか妙に後ろが気になる、気になるというか振り返る時にはそこに誰かがいると確信している。
そして振り返って誰もいないことを確認して、あぁそういえば俺が一番後ろだったなと理解する。
何度か繰り返していく内に気味が悪くなってきた

160 :代理投稿 ◆nqnJikEPbM.8 :2012/08/19(日) 00:57:53.57 ID:jvZ3IDbu0
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そして、夜が近づくにつれてそこにある気配がだんだんと濃くなっているような気がしていた。
桃鉄をいいところで切り上げ、晩御飯を食べてそろそろ寝ようかというところ。
気配は生きている人間以上に濃くなっていた。
おそらく男だと思う、姿は見えないがそう感じる、顔や背格好はわからないがおそらく男だと思う。
さすがにこいつがいるところでは眠れない、そう思い一人散歩に行くことに決めた。
友達の家を出て少し落ち着くためにタバコに火をつけ歩く、歩くのだが後ろが気になって時々立ち止まって後ろを確認する。
もちろん誰もいない、誰もいないのだが強烈な気配だけがそこにある。
どうやら連れてきてしまったようだ。
どうにか引きはがせないものかと走ってみたりコンビニに入ってみたりしたが、そいつは後ろにぴたりと張り付いて離れてはくれない。
気づけば二駅分ほど歩いていた、疲れてはきたがまだ帰れないなと思ったとき、後ろの気配がすーっと離れていくのを感じた。
これを逃す手は無いと、来た道と違う道を通り、少し遠回りしながらも帰る。
それにしてもあれはなんだったのか、俺が気付いてることにあいつも気付いてたのかな?
次かは気配を感じた時の振る舞いに気をつけるか、などと考え歩いているとようやく友達の家に着いた。
着いたのだが、玄関にまた気配がある。
逃げれないとわかった俺は二人で友達の家に入っていった。


【了】