第58話「イメージ」  百物語2012本編

語り:憂莉 ◆BPe4rMCg8k
196 :代理投稿 ◆yz7KwCMAoU :2012/08/19(日) 02:19:01.40 ID:t9naPkC70
憂莉 ◆BPe4rMCg8k 様 『イメージ』

前の家で変なことが起こっていた、と『引っ越し』にて少し触れたがその話をしたいと思う。
もともとその家に引っ越してきたときから、イヤな雰囲気だなぁと思っていた。
特に玄関を入ってすぐの廊下やそこに面したトイレや風呂、このあたりが気持ちの悪い。
しかしさすがにトイレや風呂を使わずに生活をできるわけも無く、なるべく気にしないようにはしていた。
夏だったと思う、特別早く寝たわけではないのだが夜中にふと目が覚めた。
すぐ寝てもよかったのだが、なんとなくトイレに向かった。
自室を出てリビングを通り、廊下へ出る、面倒なので電気は付けずに真っ暗な廊下を手探りでトイレまで向かう。
トイレの前に着き、さぁ入ろうかというところで頭の中に強烈なイメージが入り込んできた。
女のイメージだ。
目は開けていたはずなのだが、なぜだか目は見えていない。
頭の中だけに女のイメージが張り付いていて、恐怖のせいかそれか金縛りだったのか、体は動かない。
10分ほど経っただろうか、急に女のイメージが消えて視力も回復、体も動くようになった。
あれはなんだったのかと考えても当然答えは出ず、仕方なくトイレを済ませまた寝ることにした。
それからはそのあたりに関する怪異やその女のイメージがまた入り込んできた、ということは無い。
しかし不思議なのが、そこに住んでいたころは忘れたくても忘れられなかった女の姿が、その家から引っ越したと同時にまったく思い出せなくなったことだ。
終わり。